戦場でだけ嗤う――【剣鬼】ヴィルヘルム
クルシュ陣営に籍を置くヴィルヘルムは、使用人にして剣の使い手。
その腕はスバルはもちろん、騎士級の力を持つクルシュに稽古をつけられるほど。
その実、ヴィルヘルムは若かりし頃は「剣鬼」として名を馳せていた凄腕の剣士でした。(書籍では若き日のヴィルヘルムを主人公に据え置いた番外編も出ています。)
▲ 一瞬だけど、12話では剣を片手に家を飛び出した頃のヴィルヘルムらしき人物が出てくる
ヴィルヘルムには加護の類は一切ありませんでしたが、剣に魂を売るかのように8歳の頃から毎日剣を振るい、磨きをかけていった結果、(一応地方貴族出ではあるけど)独力にしてかつての剣聖テレシア・ヴァン・アストレア――後の嫁に匹敵し得る強さまでになった、いわゆる努力と、そして狂気をも内包している人物でもあります。
「で、そのようなお茶を撒餌に老骨に何をお求めですかな?」
でも誰もがそうであるように、ヴィルヘルムもまた、老いて丸くなりました。
かつて戦場を潜り抜けてきた殺意と暗い感情の数々は、刻まれた深いシワや鋭い双眸にいくらか残ってはいるものの、基本的に物腰は柔らか、スバルを一瞬で一般人級の人物と見抜きこそ軽んじなかったり、ペテルギウスへの殺意に動じなかったりする、年相応の懐の大きさを見せてもいます。時の流れをしみじみと感じるところ。
「あれは何度か死域に踏み込んだものの目です」
▲ スバルから初めて死に戻りの気配を“主人公特権らしく”受け取った人物でもある
スバルがほとんど唯一絶対的な信頼を寄せる男
誰にでもラフな態度で接するその言わばチンピラ感で、ゴーイングマイウェイさを貫いていたスバルですが、ヴィルヘルムにだけは当初より敬語を使い、礼儀を現してきました。
「ずーっと表で待ってるのも退屈しませんか?」
ただお年寄りに対する礼節というのもあったでしょうけど、スバルが理想とする「カッコイイおじいちゃん像」が、ヴィルヘルムの壮健な外見やクルシュに忠義を尽くす姿勢から見出したためでもありますね。
「うへぇ。女の子じゃなしに、あんなオッサンに知られれても心踊らねぇな」
「ふむ、それは同感です」(書籍版6巻より)
またなにげに女性に対する意見というものも、二人の間にはどこか通じるものがあって、スバルはベアトリスの時とはまた違う“素”をヴィルヘルムには出していくのでした。
「現状はただの超可愛い女の子と冴えない使用人ってだけです。奥さんは世界一可愛いかもしれない、そう思いながら結婚を申し込んだりしなかったの?」
「妻は……。なるほどあなたの言う通りだ。私も妻が世界一美しいと思っておりました」
▲ 意外とスバルにきちんと丸め込まれる一人。(笑)ヴィルヘルムに接するスバルは純朴な主人公らしい可愛さがある
不器用すぎる剣客のかっこよすぎる台詞集
「十四年――ただひたすらに、この日を夢見てきた」
――剣鬼が禍々しい笑みを浮かべ、青い瞳が殺意に輝いた。
「ここで落ち、屍をさらせ。――化け物風情が」
「貴様を、悪と罵るつもりはない。獣に善悪を説くだけ無駄。ただただ、貴様と私の間にあるのは、強者が弱者を刈り取る生死の理のみ。眠れ。――永久に」(書籍版7巻より)
もちろんスバルのそのヴィルヘルムに対する無邪気で絶対的な信頼には、白鯨に勇んで斬りかかっていく剣鬼っぷりも多くを占めていています。アニメ版は、戦闘も圧巻の迫力ですから、白鯨の背を縦横無尽に駆け、斬りつけまくるヴィルヘルムの鬼気迫る姿、(テレシアとの感動的な結婚エピソードも含めて)どう描かれるのか楽しみでならないところ。
ちなみに、ヴィルヘルムの台詞集の魅力が爆発しているのは、どちらかといえば白鯨討伐後、仇を討つ機会をもらい、そして討つことのできた絶大な恩義をスバルに持ちながら戦うペテルギウス討伐の最中です。仇を討てて感無量というのもあるでしょうけど、そのヴィルヘルム節に、長月さんも段々と慣れていったのかもしれませんね。
「恩人に恩を返す絶好の機会。そしてそれを言葉にせずとも、頼みこんだ本人もわかってくれている幸い。――なんと光栄なことだろうか」
「男が女に会いに行くのを、誰に邪魔されてたまるものか。貴様らも私も、再会の場面に居合わせるには血生臭すぎる。――全員、屍をさらして終わるがいい」(web3章83より)
▲ 未発売の書籍版9巻に相当するのでどう処理されるか分からないけど、本当にこの台詞はやばい
そんなヴィルヘルムはおよそ剣客好きの大体が満足できる仕上がりと言えそうですが、同時にリゼロの秀逸な台詞劇っぷり、時代劇っぷりが、妾な傲慢姫のプリシラ同様特別冴えている人物でもあります。
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Re:ゼロから始める異世界生活
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